フラゴナールの最も有名な作品であるだけでなく、18世紀美術の典型的イメージの1つといってよい。サン=ジュリアン男爵(絵を依頼した人物)は、ぶらんこに乗って開放的な楽しみにひたる愛人を垣間見るのに絶好の場所に位置して、それにふさわしい恍惚の表情で彼女を眺めている。原題は<ぶらんこのもたらす幸運>といい、こうした場面を思いつく軽妙な精神をうかがわせる。色彩と筆遣いの優美さにおいてフラゴナールの作品中でこれをしのぐものはなく、蝶のように軽やかに美しく空を舞う女性の姿は、彼の芸術の偉大な勝利を体現しているともいえるだろう。1859年、ルーブル美術館はこの絵を購入する機会を得たが、驚いたことに購入をとりやめてしまった。
<ぶらんこ>(1766~1767年)
ジャン=オノレ・フラゴナール(1732~1806年)
フラゴナールの諸作品は、革命前のフランスの浮ついた世相を要約しているといえる。主題はほぼ一貫して軽妙、往々にしてエロティックなものであり、それがあまりに見事に活写されているので、我々が画面を見るとき感じるのと同じ喜びを、画家もそれらを描くことで楽しんでいたのだと思わざるを得ないほどである。
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